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2年くらい前に、妻が ”ブッチャン”なるものと ”チーチャン”なるものに出会った ご近所に可愛がられている猫は野良にして名前をもつ そしてその名前は自然と広がる
妻は買い物帰りに出会えたりすると毎回写真を撮影しており、 仕事から戻った僕に見せては、一生懸命にその可愛さを説明してくれた
僕はこの世の生き物で最も猫が好きであるのだが、ブッチャンなるものとチーチャンなるものは ふてくされた海藻にしか見えなかった 限界までその可愛さを削ぎ落としており、かわりに野良猫の誇りのようなものをまとっていた 写真から伝わってくるのはそんな彼らのストイックさのみであった
つい先日、妻と散歩をしていた際に僕もふてくされた海藻達に出会った 甘えた声をだすもののそれは彼らの”生きる術”であり、”それ以上でも それ以下でもないよ”と言っているようであった
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2023年3月24日(金)
No.74
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1) 高校受験の足音が聞こえ始めた中学二年の秋、別段、目指していた高校があるわけでもないくせに、僕は自ら志願して塾に通うことになった。 理由は単純で、塾の話で盛り上がる友人を羨ましくなったからだ。 もし彼らが通っていたのがお料理教室なら、僕はフライパンを振っていただろうし、ラグビー教室ならスクラムを組んでいたはずだ。 どちらも悪くない青春を過ごせただろうが、とにかくそのようにして僕は学校が終わってからも鉛筆を握ることになった。
2) いざ通いだすと、途端に億劫になった。 塾の話で盛り上がっていた友人達も同様に苦痛な時間を過ごしているようだ。 彼らが楽しそうに盛り上がっていたのは、乾いた砂漠でたまたま見つけた泥水で構成された水たまりに歓喜するキャラバンのそれにひとしかった。 最初から家で冷たいサイダーでも飲んでいたらよかったのだ。 そもそもが苦痛を共有しようとした彼らの罠であったのかもしれない。 泥水の水たまりさえ本当は存在しなくって、彼らは蜃気楼の話でもしていたのかもしれない。
3) その塾まではなかなかの距離があったので、僕たちは黒曜石みたいなおじさんが運転する「塾バス」なるものに乗り合わせて通っていた。 19時に公園に近所の通学生が集まり、砂漠を彷徨い、21時30分に同じ公園におろされる仕組みだ。 僕たちが解散するまでエンジンをかけたまま黒曜石は発進しない。 夏の気持ちの良い夜なんかだとそのまま友人たちと公園で話をしたかったのだが、なんとなく見張られているようで、僕たちはそれぞれの帰路に就くことになる。 僕はいつもの近道である土手を駆け下りる。ちょっと急だけど、ここを下れば3分は早く家に着く。 そして、ちょうどかけおりたくらいになって、ようやく「塾バス」は動き出す。
4) 通い始めてぴったり一年くらい。高校受験の足音が耳をつんざきはじめた中学三年の秋、ある日突然「塾バス」の運転手が変わった。 話したこともない運転手が変わったからといって、それはまったく僕の心を動かさなかった。 友人に言われて初めて気が付いたくらいだ。
5) 21時30分にいつもの公園で降ろされる。 降ろされると同時に「塾バス」が発車する。ここでようやく運転手がかわったんだなと実感した。 見張りはなくなったものの、即時帰宅を訓練されたおりこうさんたちは誰に言われずともそそくさと帰路に就く。
6) いつもの近道の土手を駆け下りようとして、僕は足をとめた。 街灯のないその土手は真っ暗でとても駆け下りるなんてできなかったからだ。
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2022年12月19日(月)
No.73
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スマートスピーカーをいただいた事がきっかけで少しずつ家電をスマート家電へと変更してきた。
最初は家電に声をかけるのが照れ臭いものの、慣れてしまった今となってはなくてはならないものだ。
扇風機もエアコンも電灯もテレビもアレクサにお願いして操作している。 「アレクサ、ただいま」 「アレクサ、おやすみ」 「アレクサ、エアコンの温度あげて」 「アレクサ、10分経ったら教えて」 てな具合である。
この前出来心にて、あくまで冗談のつもりで、妻に 「アレクサ、お茶ついで」 と言ってみたのだが、こっぴどく叱られてしまった。
真摯な謝罪にて事なきを得たものの、反省した。
反省するとともに、文句も言わずに対応してくれているアレクサに感謝した。 妻がいないときに 「アレクサ、いつもありがとね」なんて言ってみたら ―お役に立てて光栄です― みたいな返事が返ってきた。
人間にも機械にも感謝の気持ちを忘れずに生きていきたいです。
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2022年6月6日(月)
No.72
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僕は4月2日生まれである。 ムックとガチャピンと同じ誕生日だ。
先週の土曜日が40回目(ムックとガチャピンにとっては49回目)のその日で あったのだが、午後5時15分に珍しく母親から電話があった。
―もうすぐ生まれる時間だね と彼女が言う。
何のことかわからずにいると、
―あと3分 と彼女が続けた。
どうやら僕は午後5時18分に産まれたらしい。 僕にとっては40年目の新事実である。
そんなの憶えているんだ、母親ってすごいな なんて考えていたら何故か急に照れくさくなって、
―すごい難産だったんだよ と、こちらは何度も繰り返し聞かされた彼女の十八番を遮り 「明日、そっち行くから」 と電話を切った。
その午後5時15分の着信履歴をどうにかして残したくて調べてみたのだが、 当然そんな方法あるはずもなく、スクリーンショットで我慢することにした。
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2022年4月4日(月)
No.71
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今までダウンジャケットの形や独特の匂いが苦手で 敬遠してきたのだが、先日気に入ったものがあったので 初めてのダウン購入に至った。
でっかいので徹子の部屋のレディーガガのような格好であるが とてもあたたかくて気に入っている。 どんなに外が寒くとも外出が億劫ではなくなった。
雨合羽を来た時に得られるあの謎の無敵感を 毎朝感じられて幸せである。
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2021年12月23日(木)
No.70
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